Economy

東京から地方へ コロナ禍きっかけに移転進める企業 前向きな事情と戦略


 東京圏の人口動態に珍しい動きが生じている。総務省統計局が発表した「住民基本台帳人口移動報告」によれば、近年ずっと続いてきた東京圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)への転入超過が、2020年7月に初めて転出超過に変動した。それからは転入超過と転出超過が一進一退を繰り返しており、現制度の下で集計を開始した2013年7月以降、見られなかった動きを見せている。

 異変の原因が新型コロナウイルス感染症であることは明らかだ。度重なる緊急事態宣言や自粛要請が、「東京で働いて生活する」ということ自体に疑問を投げかけているのだろう。この疑問は、東京に本社を置く企業にも当てはまる。リモートワークをはじめとする新しい働き方が、東京に本社を置く意味も薄くしている。実際、東京から本社を移転する企業も増えているようだ。

 人材派遣大手の株式会社パソナグループは2020年9月、東京に置いていた経営企画や人事、財務管理などの本社機能を兵庫県・淡路島に移転した。もともと事業基盤が淡路島にあったため、本社機能の移転はスムーズに行えたようだ。農業人材の育成やテーマパークの運営など、地域活性化事業の更なる推進が見込まれている。

 茶類販売大手のルピシアも2020年7月、東京渋谷区にあった本社を北海道ニセコ町へ移転した。同社が自然豊かなニセコ町を選んだ理由は、今後AI(人工知能)の普及により、今よりも更にクリエイトする人間が求められることを想定した上で、ニセコ町がクリエイトする最良の環境と見込んだからだとういう。アフターコロナのみならず、未来を見据えた戦略だ。

 東京圏内での本社移転もある。木造注文住宅を手掛ける株式会社アキュラホームは、東京都新宿区から埼玉県さいたま市に本社移転することを決定した。同社は併せて、昨年の7月からコロナ禍対応で在宅勤務とIT化を推進しており、全国都市部オフィスを3年で7割再編する予定だという。2023年に移転する新社屋は新宿本社面積の8倍以上にもなるが、費用はほぼ同等で収まる見通しだという。

 同社が敷地面積を増やす理由は、ショールームや宿泊体験棟、実験棟など、リアルニーズに応える日本最大級の体験型施設を開設する為だ。オンラインが主流の昨今だが、実際の素材の質感などを確認したいという声に応えるため、アフターコロナのリアルニーズに対応できる敷地面積を確保した。同じ東京圏内なので従業員の生活環境にも大きな影響はないだろう。さらには移転先地域の活性化にも貢献できるという点にも注目したい。

 コロナ禍以前から、東京一極集中は問題視されていた。災害リスクの分散や地方創生、東京の地価高等問題など様々な課題に対しても、喜ばしい動きといえるのではないだろうか。コロナ禍というピンチをチャンスに変える前向きな企業の動きが、コロナ禍で混とんとした社会の希望の光となってくれることを祈りたい。(編集担当:今井慎太郎)

■関連記事
18歳、地方創生は成功していない4割。都市部の生活を希望6割
東京圏への本社移転 6年連続での転入超過
中央省庁の地方移転、背景にある「都落ち感」


Source link

Do you like this article??

Show More

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *

Back to top button